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個人的ゲーム史6

2014/05/14

■RPGツクール
 わが高校時代。
 パソコン研究部の活動場所たる情報処理室の隅っこには、俺をはじめとするこの学校きってのぼんくらたちが日々つどい、暗愚きわまる時間を過ごしていた。
 ぼんくらたちは当時、いったいどこから入手してきたのか、怪しげなゲームが入ったフロッピーディスクを無数に持ち寄った。

 その中のひとつに「RPGツクール」なるものが混じっていた。
 言わずと知れたRPG制作ソフトである。
 これを使えばドラゴンクエストのような名作をつくれる……とまで安易なことを思ったわけでもないだろうが、当時の俺は軽い気持ちでRPGツクールを起動した。
 RPGツクールに触れてみてわかったのは、とにかくゲーム作りがたいへんなのだな、ということである。
 戦闘で使う呪文ひとつひとつに名前を与え、威力や画面エフェクトを設定する。出来あいのものをただ設定するだけでも相当に面倒なのである。これがもし、それぞれを自分でゼロから作るんだと思うと気が遠くなる思いがした。

 戦闘まわりは置いておいて、俺はフィールドマップ作成に取り掛かってみた。
 中央に適当な大きさの陸地を描き、街をつくってみようとしたのだが、そこで早くもつまづいた。
 街のアイコンを配置し、そのアイコンに主人公が触れると街のフィールドに切り替わる……ように設定したいのだが、そのやり方がわからない。
 あれこれ考えた挙句、俺は陸地から遠く離れた場所に島を作り、そこに街を建設することにした。
 主人公が街のアイコンを踏むと、そこへワープするように設定した。彼は街の中に入ったようにみせかけて、実は遠く離れた場所に建造された箱庭の街に存在しているのだ。

 街の入口に立っているキャラクターを配置し、俺はこうセリフを設定した。

「ここは いつわりのまち です」


……この「いつわりのまち」は、パソ研の連中にかなり受けた。
 みんな爆笑していた。
 俺もいっしょに笑ったが、微妙に複雑な気分ではあった。
 軽い気持ちとは言え、生まれて初めてゲームを作ってみようとして早々に挫折を味わった、というのも一因であったかもしれない。
 あるいは「いつわりのまち」という名の皮肉さに、どこか笑えないものを感じたのかもしれなかった。

 俺もそうだし、たぶん俺以外の高校生もそうだ。ひょっとすると中学生もそうなのかもしれない。
 男子、あるいは少年という生き物はとにかく偽りに満ちている。
 隠し事や偽りのない男の子など存在しないのではないかと、俺は思う。
 俺たちは当たり前のように友達に対して偽り、家族に対しても偽る。
 とても重要かもしれないし、実はなんの価値もないかもしれない「なにか」を、別の何者かから、俺たちは必死に遠ざけ、あざむき、隠そうとしていた。

 ときには自分自身にすら、ごく自然に偽りを働いていた。
 本当の自分ってなんだろう?
 自分の夢ってなに?
 俺って、これからどうなるの? どこへ行くの?

 きっと誰だって一度は考えるし、もしかしたら一生考えつづけるかもしれないような疑問から目を逸らし、ごまかすことに腐心していた男子高校生がつくったのが「いつわりのまち」だ。
 本来であれば「街」は新たな冒険や希望を象徴しているはずだ。
 そのアイコンは、今、歩きさまよっているこの世界とは別の世界につながっている。そこでは新たな人々との出会いが、強い武器や防具が、自己の成長と栄光が待っているはずなのだ。

 だが「いつわりのまち」は違う。
 別世界などではなく、離れた場所にあるだけの「同じ世界」に属するものだ。
 その構造には、なんというか……樹海を脱出しようと長時間歩きつづけていて、出口かと思いきや結局は同じ場所に戻っていたという類の閉塞感、もっと言えば絶望感がつきまとう。
 俺たちはどこにも脱出できないのではないか。
 これまでも、そしてこれからも、ずっと、どこへも抜け出すことはできないのだろうか。
 ひたすらあがき、もがき、やっとたどり着いた地でも「ここは いつわりのまち だよ」とそっけなく言われるだけなのではないかと。


 この「いつわりのまち」のことを考えると、まるで対になっているかのように、俺はとあるゲームのエンディングを思い出す。
 ゲームボーイソフト「魔界塔士Sa・Ga」のエンディングである。
 最後のボスを倒した主人公たちは、異世界への扉を前にしてこんな会話を交わす。

「これからどうする?」
「このむこうに別の世界があるのかな?」
「行ってみるか?」
「俺はどっちでもいいぜ」
「そうだな。でも、ここもけっこういいとこになったんじゃない?」
「言えてる。悪いやつ全部やっつけたからな」
「行こう!」
「どこへだ?」


 そして扉に背を向け、こう告げるのだ。高らかに。

「俺たちの世界へ!」


 異世界ではなく、自分たちが暮らす世界を選択するのである。
 そこには、とある男子高校生のような偽り、虚飾は一切ない。

 けれど、もし彼らが異世界への扉を開けていたら、どこへたどり着いていただろう?
 まあ、まかり間違っても「いつわりのまち」に行ってしまうことはないだろう。
 きっと「いつわりのまち」は、その名にふさわしく偽りにまみれた男だけが訪れることができる最果ての掃き溜めであり、今はもう失われて思い出せないなにかの残滓であり、悪い意味での聖地なのだ。
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