ピクミン2のこと

2009/06/24

 ゲームキューブの「ピクミン2」を今さらプレイしはじめる。

 いつもの逃避だ。それはわかっている。
 すべてわかり、諒解した上でのピクミン2だ。

 このゲームが発売された当時(もう5年も昔だ)、俺はとある地下ステージで100匹ものピクミンを一瞬で失うという惨事に直面し、そしてゲームを中断した。

 5年ぶりに再開(というか最初からやり直している)したピクミン2だが、やはりおもしろい。
 ピクミンをちまちまと増やしていくのがおもしろい。
 いろいろなお宝を力を合わせて運ぶさまを見るのがおもしろい。
 おなじみ赤、青、黄に加え、紫と白の5種類のピクミンを使い分けて効率よく探検していくのがおもしろい。

 ところでピクミン2は大人のゲームだ。
 正確には「大人にも楽しめるゲーム」なのかもしれないが、あえて俺は「大人のゲーム」と言い切りたい。

 なぜならこのゲームには死がある。
 目をそむけることのできないピクミンの死がある。
 俺は5年前の惨劇の場所……クイーンチャッピーの待つ地下へ再度赴き、そして性懲りもなく75匹のピクミンを一瞬で失う。
 からくもクイーンを倒してあたりを見渡せば、残ったピクミンはたったの数匹。
 5年前と大差ない惨劇。

 だが、今回は負けではない。
 生き残っている奴らがいる。
 たった数匹でありながら、その目に限りない闘志を宿した連中が、その瞳で「さあ」と俺に語りかける
 さあ――お次はどいつだ?

 俺たちは暗い地下から脱出する。
 光満ちる世界へ。
 俺は死んだ75匹、そして5年前に死んだ100匹の魂とともに、今度はゲームを放り出さずに前へ進む。


……などという妄想に陶酔しかけたところで思い出す。
 ピクミン2におけるその冒険の動機は、実はひどくしょっぱいということを。

 前作ピクミンは、主人公オリマーが未開の惑星に不時着するところから幕を開ける。
 そこで出会った不思議な生物ピクミンと力を合わせてロケットの部品を拾い集め、宇宙へ脱出するという美しい物語があった。
 生命維持装置が切れる30日間のあいだに、どうにか生き残るためにあがく姿があった。
 数え切れないピクミンの死を乗り越えてオリマーは生きていく。それは浅ましいかもしれないが、ひどく俺たちの心を打つ。


 だが、今作ピクミン2の物語はこうだ。
 やっとの思いで惑星を脱出したオリマーは、母星に帰る。
 が、オリマーの会社は莫大な借金を抱え倒産の危機を迎えていた。
 そこで、ひょんなことから、オリマーが惑星から持ち帰ったガラクタが高値で売れることに気づく。
 オリマーはピクミンの待つ惑星へと舞い戻る。
 目的は、そう、お宝を集めて借金を返済するため。
 金のためだ。

 つまるところピクミン2では、金のためにピクミンが死ぬ。
 愛や勇気、ましてや友情ではなく、ただひたすら金を得るために利用されてピクミンは死んでいく。

 だからピクミン2は大人のゲームだ。
 ただ金のために生き、金のために死ぬことを是とする俺たち薄汚れた大人たちのゲーム。

 前作のピクミンでは、黄ピクミンに爆弾を抱かせ、強大な敵に喰わせ内部から爆散させるという凄絶な戦術が猛威をふるっていたものだ。
 だが今回、爆弾という要素自体がなくなっている。

 代わりに――白ピクミンが存在する。
 有名なCMソングにもあるように、そう、白ピクミンには毒がある。
 言わずもがな、白ピクミンを故意に敵に食わせるという戦術が、とても有効な手段としてこのゲームでは用意されている。
 少数の犠牲を以って多数を救う。
 それが大人の選択だ。
 大人は汚い。
 汚いから大人なのか。
 いや違う。
 ただ俺が汚いだけだ。
 誰一人犠牲にせずに勝利することの困難さを放棄した汚い俺は、白ピクミンをボス敵である巨大チャッピーに向けてほうり投げ、それを飲み込んであっさり死に絶えるボスの死に様を見て、暗い達成感をおぼえることができる。

 だがこのゲームにおいてピクミンの死は、冷酷にカウントされる。
 毎日どれだけのピクミンが燃え、溺れ、痺れ、潰れ、食われ――死んだか。
 細かい死因ごとにそれはすべて厳格な記録として残り、いつでも閲覧が可能だ。
 だから忘れない。
 忘れることなどできない。
 ピクミン2におけるシステムは、ピクミンたちの死を忘れることをけっして是としていない。


 そうしてお宝探しを進める主人公オリマー。
 このゲームを語るには、ある意味ピクミン以上に彼について触れなければならない。
 そのコミカルな外見とは裏腹に、彼は謹厳実直で妻子のある一介のサラリーマンである。タフかもしれないが、けっしてヒーローやスーパーマンの類ではない。
 しいていえば、大人のプレイヤーに向けた大人の主人公。
 それがオリマーだ。
 惑星で手に入る無数のお宝、そのすべてに彼のコメントがついており、それらをすべて読むことは大人としてのプレイヤーのたしなみであろう。

「いつからだろう、私があのころのような夢を失ったのは」
「だんだん家族との距離が遠くなっているような気がする」
「巨大生物の口が迫る……そんな悪夢にうなされる夜もある」



 ピクミン2はお宝探しの期限がなく、のんびりと時間をかけて遊ぶことができる。
 だが借金取りから逃げ回る母星の社長からのメールが、日を経るにつれてだんだんと狂気に満ちてくるのが実にいやな感じでよい。

「借金取りから隠れるために、ワシはしばらく橋の下に住むことにしたよ」
「夜になるとそのへんの野生動物が寄ってきて困る。暖かいのが救いだがね」
「キミをクビにして、代わりにこの野良たちを雇うことにしよう。きっとキミなんかより役に立つぞ」



……とまあ、そんな按配であるからして、悠長に宝探しにふけっていられないのが正直なところだ。


 現在、あと少しで借金を完済できるところまでお宝を集めた。
 そのために、すでに相当な数のピクミンが死んでいる。
 これからも死ぬだろう。
 さらなるお宝と、金のために。
 オリマーのために。
 あるいは、ほかならぬ、この俺のために?

 俺のためにためらいもなく死ぬピクミンたちを、俺は愛してやまない。
 けれど連中は一言だって口にはしない。愛してくれとは、絶対に。
 だからピクミン2は大人のゲーム。
 薄汚い大人たちの愛を試す、はかなくも美しい生き物たちのゲームだ。
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