けいおん!1巻(ブルーレイ)

2009/08/03

 最近、生きているのがつらい。
 だからアニメ「けいおん! 1巻(ブルーレイ)」を買った。

 正直、安い買い物ではない。
 でもいいんだ。
 彼女たちの放課後の生き様を無駄なほどの高画質で堪能できるのであれば、そこに後悔はない。
 後悔はないが、それでもどこかで納得できていない己の惰弱さをねじ伏せるため、このブルーレイのすばらしさについて書いていきたい。

けいおんブルーレイ

 まず、ブルーレイなのにパッケージが赤い……というかピンク色である。
 なんという反骨精神。
 既成観念にとらわれないその心意気、まさにロック。
 彼女たちは紛れもないロッカーであろう。

 パッケージを覆っている薄いフィルムをおそるおそるやぶるとき、おそらく唯が着用している黒ストッキングを指でやぶるとしたらこれに似たような感触なのではないか、という考えが唐突に浮かぶ。
 ストッキングほどの伸縮性はないそのフィルム越しに、唯のふくらはぎのあたりとおぼしき体温と柔らかさを感じたのだが、たぶん気のせいであろう。
 というか、俺はちょっと疲れているのであろう。
 そうだ、俺は疲れている。
 だからこのパッケージ絵を見て、四人の肉体がみっちりとつまった空間に途方もないEROさと、少しばかりの悲しさを感じるのだろう。

 悲しさ?
 どうして悲しいのか、俺は説明もつかぬままパッケージを開ける。
 ピンク色でふちどられた溝の間に、ブルーレイディスクが納まっている。
 ちなみにブルーレイといっても盤面は普通のCDとかDVDと同じ色をしており、ちょっとがっかりする。

 他にもいろいろ入っている。
 はがきやらイラストカードやら、ピックやらが入っており、少なからず得した気分になる。
 はがきはプレゼントキャンペーンの応募用はがきであり、どうやら劇中歌「ふわふわ時間」の学園祭バージョンのCDが当たるものらしい。
 それはすばらしい、せっかくだしこの機会に応募してみるかと思ったが、先日発売されたミニアルバム「放課後ティータイム」に封入されている応募券が必要であり、あいにくそれを買っていない俺は深い絶望にとらわれる。

 ふと、もう一枚、二つ折りのカードが封入されていることに気がつく。
 「キャラクタープロフィールカード 平沢 唯」とある。
 中を見ると、主人公・平沢唯の紹介が詳しく記載されている
 唯の生い立ち、家族構成、趣味、通学方法まで書いてある。
 そして身長は156cm。
 体重は50kgと書いてある。

 50kg。
 唯の質量は、50kgなのか――。
 俺は近所の米屋に行き、20kgの玄米と、20kgのタイ米、10kgのきらら397を買い求め、いにしえの農耕民族のように両肩と頭に米袋を担いで家に帰る。

 50kgは、かなり重かった。
 それは米の重み。
 日本(及びタイ)の大地が育んだ豊かな心……魂……そして生命の重みだ。
 俺は床に仰向けになり、米袋を自身の上に乗せてみる。
 ずしりとした農作物の重みが、俺の胸、腹、腰にのしかかってくる。

 50kg、これが唯の重みか。
 そう思うと唯がいっそう身近に感じられる。
 というか、むしろ唯そのものが俺の上に乗っかっているような気すらする。

 いや、いっそ、そういうことにしてしまえばよい。
 同じ質量を持つ米袋が唯であって、なにか不都合があるだろうか、と俺は考える。
 特にない、という結論が導き出される。
 疲れているのだろう。
 だから俺を圧迫する重みがひどく心地よく、その冷たさが少し悲しい。

 俺はその姿勢のままブルーレイ本編の視聴に入る。
 再生。
 鮮やかだ。
 ちょっと目に痛いほどの鮮烈な映像だ。
 なにかが沁みたのか、俺の目からは涙が流れている。
 全身には唯の重み。


 パッケージには、もう一枚、長方形のシールが入っている。
 そこにはカスタネットと手のひらのイラストがあり、その下に「うん」「たん」「うん」「たん」と書かれている。

 ああそうか、と俺は唐突に理解する。
 これは予想に過ぎないが、「うん」は宇宙の終わりを示す「吽」であり、「たん」は「断」を示すのではないか。
 すなわち、この世界で終わってしまったもの――あるいは断たれてしまったなにかを伝えるために、このブルーレイは今、俺たちの手元にあるのだろう。

 生きているのがつらくても、嫌なことや苦しいことがあっても、息をしている限りは――米袋よりも理不尽な重みを背負って、まだしばらく終わりそうにない宇宙の片隅であがき続けるのが俺たちだから、きっと彼女たちは第一話の最後に「翼をください」を演奏するのだろうと、俺は疲れた頭で理解する。
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