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痛風(かぜ) 吹いてる

2011/07/04

 病院で再検査を受けた。
 俺から採取した血液および尿の検査結果を確認した整形外科の担当医がおもむろに立ち上がり、

  遠くへ
  遠くへ
  風 吹いてる――


 そう高らかなテノールで歌いはじめ、それは往年の格闘ゲームアニメ「ストリートファイターV」の主題歌であり、すなわち俺の風……いや痛風(かぜ)はまだ吹き続けていることを知る。

 尿酸を排出するための薬物の処方箋をもらう。
 院外処方とのことで、家の近所の薬局で薬をもらえるらしい。処方期限の日曜日になるまでぐずぐずしており、いざ薬局を探してみるとどこもかしこも閉まっている。
 薬局というのはたいてい日曜日はやっていないらしい。
 これまで病院に行ったり処方箋もらったりすることなどほとんどなかったので知らなかった。

 次で閉まっていたら諦めよう、諦めて尿酸を体内に蓄積して永久尿酸機関と化してやろうと思いつめながら、かれこれ十年も住んでいるのに一度も通ったことのない街路を歩いていくと、ひどくこじんまりとした半分民家のような薬局を見つけた。
 店のシャッターは閉まっていなかったので、がたがたと音を立てる戸を横にずらして、ごめんください、と声をかけると「はーい」と奥のほうからのんびりした声が聞こえた。
 出てきたのは声から想像した通りの人の良さそうなおばちゃんで「暑いわねえ、今年は一番暑いわよねえ」と何度も繰り返しつつ、なぜか黒糖の飴玉をひとつくれた。

 おばちゃんに処方箋を渡して、壁際に沿っている長椅子に座って待つ。まるで田舎のバスの待合所のようなとても狭い薬局で、俺一人しかいない。長椅子の反対側には大きなテディベアが置いてある。
 もらった飴玉を取り出して口に入れる。
 あの、なんとも言えない古臭い甘みが染み渡る。
 俺が座る椅子のすぐ目の前はレジカウンターになっていて、その棚状にへこんだ空間にはたくさんの絵本が並べられている。
 なにげなくそれを手に取り、開いて読みはじめたとたん「お待たせしました~」とおばちゃんが戻ってきた。

「本当に暑いわねー、ごめんなさいねクーラー切ってて。暑いでしょ」

 ユリノーム、ウラリット。
 それぞれ体内の尿酸の排出を促す薬と、酸性尿による尿結石を防ぐ薬、らしい。
 あいにくユリノームの在庫が切れてしまったらしく、また明日訪れることになった。

 そして、なぜか薬の包み紙に「けろけろけろっぴ」のシールを貼ってもらった。おばちゃんはにこにこしながら「これ、貼っておいたからね」などと言って薬をその包みの中に入れた。
 三十路過ぎの男に、マスコットキャラのシールて。
 何十年かぶりに子供扱いされたようで、どうにも気恥ずかしくなる。
 この歳のおばちゃんから見ると、俺のような年頃の男でも子供みたいなもんなのだろうか。

「暑いけど元気に明日も来れるように、はい」

 おばちゃんからまた黒糖の飴玉を手渡された。
 明日、残りのユリノームを受け取りにここへ来たら、やはり嬉々として飴玉を渡されるのだろうか、と考える。
 たぶん渡されるだろうなあ、と俺は思った。
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