休日出勤帰りの戦士

2011/11/19

 土曜日だったが仕事で出勤。
 朝からひどい雨だった。

 夕方、仕事を終えて職場を出ても雨はまだ降り続いている。

「くそっ、まったくひどい一日ですよ!」

 駅まで帰り道がいっしょの客先の男性社員が、雨に濡れながら悪態をついている。
 この人はえらく短気で口も悪いが「仕事なんざ基本的にどうでもいい。が、それでも手を抜かずにやる」というスタンスの人で、俺は嫌いではない。

 強い横殴りの風が吹いており、傘がほとんど役に立たない。
 社員さんの傘が風に煽られ、斜め後方に吹き飛ばされそうになる。それを力任せに引き戻すと、傘の柄の真ん中あたりが、ほぼ90度の角度で折れ曲がっていた。
 頭にきた社員さんは、折れ曲がった部分に何度も力を入れ、完全に柄をへし折って傘から分離させてしまった。

 あーあ、ぶっ壊しちゃったよ。
 俺が呆れていると、

「あれ、これはこれで安定しますよ」

 彼は柄が極端に短くなった傘を頭上にかかげて言った。
 傘の根元を直接掴んでいるので、風の影響を受けづらくなったのだろう。持ち手の部分が短いので、腕を頭の上にかざすようにして傘を保持しなければならないが。

 その姿は、まるで円形の盾を真上方向に構える古代の戦士のように見えた。
 俺がそう伝えると、

「……剣もありますよ」

 などと言って、さきほど分離させた傘の柄を、空いている手に構えてみせた。
 休日出勤帰り、豪雨の中で、まさかの完全武装である。
 俺が言い表しがたい不思議な感慨にとらわれていると、駅に着いた。

「じゃあ、明日もよろしくお願いします」

 駅のホームにつづく階段の下で、俺たちは別れた。
 ちなみに、日曜日も仕事だ。
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