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うぇい民

夢の中で俺はうぇい民だった。

うぇい民というのは、よくわからないがとにかく「うぇい」という類の、返事のようにも挨拶のようにも感嘆や悲嘆を示すようにも聞こえる言葉しか発さない人間のことである。

仕事を頼まれれば「うぇーい」と快諾し、とんでもないミスの報告を聞いても「うぇーい」と許した。
酒の場ではとにかく「うぇいうぇい」と言えば場が盛り上がり、やたらと重宝された。
女性の話にはすべて「うぇい……」と答えるだけだったが、なぜか妙に信頼され、やたらとモテた。

それでとくに不都合はなかった。生きていくことに支障はなかった。語彙、言葉などという曖昧で不確実で、ときには不誠実ですらあるツールに頼らなくても楽しくやっていけた。

だから夢が終わり、目覚めたときの違和感はハンパではなかった。
「あー」
俺は布団に身を起こして、あほみたいに口を開けて言葉を発してみた。俺はなんでも口にすることができる。どんなことだって言える。あらゆる言葉を発することが可能だ。その気になればどの世界のどの国の言葉だって。
それなのにこの喪失感はどういうことだ?

俺は夢の中で発していた例の語句を口にしてみた。
「うぇい」
それは返事のようにも挨拶のようにも感嘆や悲嘆を示すようにも聞こえたが、当の自分でもどういう意図で発せられた言葉なのか判別することはできなかった。
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